ストレスと体組成の科学:過酷な練習が『筋肉』ではなく『脂肪』を増やす皮肉

少年野球の現場では、「もっと食べて体を大きくしろ」「厳しい練習に耐えて筋肉をつけろ」という言葉が飛び交います。しかし、最新の医学研究は、過度な負荷や精神的プレッシャー(有害なストレス)が、子供の体組成(筋肉、脂肪、骨の割合)を最悪のバランスに変えてしまうことを明らかにしています。

なぜ「しごき」に近い練習が、野球選手としての理想の体型から遠ざけてしまうのか。その代謝のメカニズムを解説します。

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目次

1. コルチゾールが引き起こす「脂肪の蓄積」と「筋肉の減少」

慢性的なストレスによって分泌され続ける「コルチゾール」は、体内のエネルギー配分を劇的に変化させます。

  • 筋肉(リーンマス)の減少: コルチゾールは筋肉を分解してエネルギーに変える働きを促進するため、過度なストレス下では練習をすればするほど筋肉がつきにくく、むしろ減ってしまう現象が起きます。
  • 内臓脂肪(腹部脂肪)の増加: 同時に、コルチゾールは脂肪を「内臓まわり(体幹部)」に溜め込む性質を持っています。実際に、強いストレス環境にいた子供は、そうでない子供に比べて「トランク・ファット(体幹部の脂肪)」の割合が有意に高く、全身の筋肉量が少ないことが証明されています。

「体重が増えたから体が大きくなった」と喜んでいても、その中身が「筋肉」ではなく「ストレスによる脂肪」であれば、野球のパフォーマンス向上には繋がりません。

2. 骨をスカスカにするストレスのダメージ

身長を伸ばすだけでなく、野球選手の武器である「強い骨」を作るプロセスも、ストレスによって阻害されます。

  • 骨芽細胞の抑制: 高濃度のコルチゾールは、骨を作る細胞(骨芽細胞)の活動を直接抑え込んでしまいます。
  • 骨粗鬆症のリスク: 成長期に過度なストレスを受け続けると、骨密度が十分に上がらず、将来的に骨粗鬆症や疲労骨折を起こしやすい脆弱な体になってしまうリスクがあります。

3. 「インスリン抵抗性」という目に見えない時限爆弾

過酷な練習とプレッシャーは、子供の代謝システムを「省エネ・蓄積モード」に書き換えてしまいます。

  • インスリン抵抗性の誘導: 慢性的な高コルチゾール状態は、血糖値を下げるインスリンの効きを悪くさせます(インスリン抵抗性)。これにより、食べた栄養が効率よくエネルギーとして使われず、脂肪として蓄えられやすい「太りやすく疲れやすい体」になってしまいます。
  • 血管へのダメージ: この代謝の乱れは、たとえ子供が肥満体型でなくても、将来的な高血圧、糖尿病、心臓病のリスクを劇的に高めることが分かっています。

4. 「夏に耐える体作り」が代謝を壊す

「酷暑に耐えてこそ強くなる」という考えは、代謝の観点からも大きな間違いです。

極限の暑さの中での活動は、身体にとって生存を脅かす「物理的ストレス」です。脳が生命の危機を感じている状態では、筋肉や骨を構築するための「同化作用」は完全に停止し、組織を壊してエネルギーをひねり出す「異化作用(カタボリック)」が支配的になります。

夏の酷暑で無理をさせることは、「今ある筋肉を削り、将来の健康を担保に、その場しのぎの体温調節をしている」に過ぎないのです。

5. まとめ:理想の体型を作るための「科学的アプローチ」

野球選手として、大きく、強く、速い体を手に入れたいのであれば、大人は以下の視点を持つべきです。

  • 「体重の数字」に騙されない: ストレスによる脂肪の増加を「成長」と勘違いしてはいけません。
  • 安心感こそが「筋肉」を作る: 心理的な安全性が保たれ、リラックスしている時こそ、身体を構築するためのホルモン(成長ホルモンやIGF-1)が活発に働きます。
  • 休養は「建設作業」の時間: 練習は「破壊」であり、休養こそが筋肉や骨を「建設」する時間です。休養を削ることは、建設現場の作業員を全員追い出しているのと同じことです。

子供の心身を健やかに育むとは、「生存モード」をオフにし、身体が安心して「成長モード」に全エネルギーを注げる環境を整えることなのです。

参考文献

  • Maria Mousikou, et al. Stress and Growth in Children and Adolescents. Horm Res Paediatr. 2023.
  • Brie M. Reid, et al. Early Life Adversity with Height Stunting Is Associated with Cardiometabolic Risk in Adolescents Independent of Body Mass Index. PMC. 2018.
  • Constantine Tsigos, et al. Stress: Endocrine Physiology and Pathophysiology. Endotext. 2020.
  • Jack P. Shonkoff, et al. The Lifelong Effects of Early Childhood Adversity and Toxic Stress. Pediatrics. 2012.
  • Philip G. Murray, Peter E. Clayton. Disorders of Growth Hormone in Childhood. Endotext. 2022.
  • Berrin Ergun-Longmire, Michael P. Wajnrajch. Growth and Growth Disorders. Endotext. 2025.
  • Anna E. Johnson, et al. Growth Delay as an Index of Allostatic Load in Young Children. PMC. 2011.
  • Andrew Garner, Michael Yogman. Preventing Childhood Toxic Stress: Partnering With Families and Communities to Promote Relational Health. Pediatrics. 2021.
  • Center on the Developing Child at Harvard University. Excessive Stress Disrupts the Architecture of the Developing Brain: Working Paper 3.
  • Hillary A. Franke. Toxic Stress: Effects, Prevention and Treatment. PMC. 2014.
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