オーバーワークの正体:激しすぎる練習は「身体的ストレス」

日本の少年野球界では、「たくさん練習する子ほど偉い」「休みを惜しんでバットを振るのが美徳」という考えが今も根強く残っています。しかし、子供の体は「小さな大人の体」ではありません。

発達段階にある小学生にとって、過度な練習量は単なる疲労にとどまらず、体内で「有害なストレス反応」を引き起こします。これがどのようにして成長のブレーキとなってしまうのか、そのメカニズムを解き明かします。

おすすめバット
これから野球を始める子にも最適な、今主流の飛ぶバットはコレ!

【期間限定10%OFF】

\家族旅行の予約、忘れてませんか?/

毎月5と0のつく日に予約すれば最大20%OFF!

目次

1. 「激しい運動」は脳にとって「生命の危機」と同じ

運動は本来、成長を促進する良い刺激(善玉ストレス)ですが、それが子供の許容範囲を超えると、脳はそれを「身体的攻撃」と見なします。

過度なトレーニングによって体が極限まで疲弊すると、脳のストレス中枢が作動し、心理的ストレスを受けた時と同じように「コルチゾール」が分泌されます。第1回で解説した通り、このホルモンが慢性的に増えると、成長ホルモンの分泌を直接妨げ、身長の伸びを止めてしまいます。

2. 成長板(骨の工場)を襲う「炎症」のダメージ

子供の骨の端には「成長板(骨端線)」という、新しい骨を作る工場のような組織があります。

最近の研究では、オーバーワークによる過度な負荷や慢性的な疲労が、体内で「炎症性サイトカイン」という物質を増加させることが分かっています。この物質は成長板に直接作用し、軟骨細胞が骨へと成長するプロセスを邪魔してしまいます。

つまり、限界を超えた練習を強いることは、子供の体の中で「背を伸ばす工場」を攻撃しているのと同じことなのです。

3. 「骨の老化」と「思春期の遅れ」という代償

過酷な負荷がかかるスポーツ(新体操の過度なトレーニングなど)の研究では、驚くべき事実が報告されています。

  • 骨の成熟(骨年齢)の遅延: 激しすぎる練習を続ける子供は、実年齢に対して骨の成長が遅れてしまうことがあります。
  • 思春期の到来が遅れる: 身体が「生存」にエネルギーを使いすぎるため、次のステップである「生殖機能の発達(思春期)」に必要なエネルギーが足りなくなり、成長のラストスパートである二次性徴が遅れるリスクが指摘されています。

「中学・高校で活躍するために今追い込む」という考えは、その活躍の土台となる「体格」を作るチャンスを自ら削っている可能性があるのです。

4. 指導者が見落としがちな「休養」の科学的価値

スポーツ医学において、筋肉や骨が成長するのは練習中ではなく、練習後の「休養中」です。

子供の体には、受けたダメージを修復し、以前より少し強く作り替える「超回復」のサイクルがあります。しかし、休みなく練習を詰め込むと、修復が追いつかないまま次のダメージを受ける「負の連鎖」に陥ります。

科学的な視点に立てば、「適切な休養を与えること」は、千本ノックをさせることよりもはるかに価値のある「強化トレーニング」なのです。

5. 子供が発する「オーバーワークのサイン」

指導者や保護者は、子供が以下のようなサインを出していないか、常に注意を払う必要があります。これらは体が「身体的ストレス」に悲鳴を上げている証拠です。

  • 朝、なかなか起きられない(慢性的な疲労)
  • 以前より怪我(捻挫や関節痛)が増えた
  • 食欲が落ちている
  • 練習に対する意欲や集中力が目に見えて落ちた
  • 身長の伸びが、過去のペースと比べて明らかに停滞している

野球は一生続けられる素晴らしいスポーツです。しかし、小学生という「一生に一度の成長期」を犠牲にしてまで優先すべき練習など存在しません。大人が正しい知識を持ち、「勇気を持って休ませる」ことこそが、子供の才能を最大化させる唯一の道です。

参考文献

  • Mousikou M, et al. Stress and Growth in Children and Adolescents. Horm Res Paediatr. 2023.
  • Cooper DM, et al. Exercise, stress, and inflammation in the growing child: from the bench to the playground. Curr Opin Pediatr. 2004.
  • Georgopoulos NA, et al. Height velocity and skeletal maturation in elite female rhythmic gymnasts. J Clin Endocrinol Metab. 2001.
  • Sävendahl L. The effect of acute and chronic stress on growth. Science Signaling. 2012.
  • Tsigos C, et al. Stress: Endocrine Physiology and Pathophysiology. Endotext. 2020.
  • Murray PG, et al. Disorders of Growth Hormone in Childhood. Endotext. 2022.
  • Ergun-Longmire B, et al. Growth and Growth Disorders. Endotext. 2025.
  • Shonkoff JP, et al. The Lifelong Effects of Early Childhood Adversity and Toxic Stress. Pediatrics. 2012.
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次